製作費用 : 5万円
エコランの開発時においてフレームやカウルはCADでの解析が容易ですが,エンジンのシミュレーションは複雑になります.そこで,通常はエンジンを実際に動かして試験をすることになります.
しかし,エンジンの計測機器は非常に高価であるので,通常はサーキットを走行して試験をすることになりますが,得られるデータは燃費と平均速度だけであり不十分であるほか,天候条件やドライバーの体重など変動する因子があるため,一定条件で評価を行うことができません.
そこで,低価格で安定したデータを得られるシャーシダイナモを開発することにしました.
この装置によってこれまでとは比べられないほど大量のデータを得ることが出来ました.
ここでは,シャーシダイナモの開発と製作の手順について説明していきたいと思います.
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シャーシダイナモの種類
シャーシダイナモには,大きく分けて2種類あります.
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加速度型のシャーシダイナモ
今回製作するシャーシダイナモはこのタイプで,フライホイールを使用しているのが特徴です.
これは,慣性モーメントを走行負荷として使用しているので,速度一定の時には負荷がかかりません( T = Iα ).
しかし,エコランではスロットル全開で加速する(一定速での走行がない)ので,このシャーシダイナモでも大会走行時と同じ負荷を与えることができます.
メリット・・・安価に製作できる
デメリット・・・負荷の大きさをすぐに変えられない,一定速度のときに負荷が与えられない
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渦電流などで負荷を与えるシャーシダイナモ
走行負荷として渦電流制動器やモーターを使用しているものです.
フライホイールを使用していないので,一定速度で走行しているときにも負荷を与えることができます.
メリット・・・負荷をすぐに変更できる,セッティングがしやすい(かも)
デメリット・・・非常に高価
今回は,加速度型を選択して製作しました.
これから,製作方法を説明していきます.
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その1
まず,必要なフライホイールのサイズを決定します.
計算式は, I [kg・m^2] = ( 車体総重量 ) × ( ローラー半径 )^2 です.
が,その他にも計算することがあり面倒なので,Excelを使用しました.
フライホイールの慣性モーメントは,(ローラとフライホイール)間の増速比の二乗で増えていきます.
(例)フライホイールの回転数を2倍に増速すると,得られる負荷(トルク)は4倍になる.
この原理を利用して,フライホイールを小型にして,持ち運び性の向上をしました.
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その2
次に,シャーシダイナモのフレームを設計します.
ローラーと車軸はミスミにて寸法を指定して製造してくれるので,これを活用しました.
設計したフレームは,FEMで強度解析をした結果,安全率5.7であったのでそのまま製作に移りました.
今回使った材料は,
アルミパイプ 20*40mm t=2.0
ローラー ROLJT80–25–200–E75–F75–P5–S5
シャフト1 SSFGKRRA25–350–F5–S5–KA81–A23–KB136–B48–KC231.4–C48
シャフト2 SSFGKRRA25–350–F5–S5–KA41–A23–KB66–B38
キー1 KESF8–48
キー2 KESF8–38
チェーン CHE25–U
スプロケ1 K25B75
スプロケ2 SP25B25–N–12
ベアリング C–PDR25
セットカラー SSCSW25–12
キャスター 420R–R50
などです.
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その3
フレームを切断し,溶接していきます.
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その4
ワイヤー放電加工機でフライホイールを切り出します.
また,スプロケに,キー溝付の穴をあけます.
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その5
あとは,組み立てるだけで完成です.
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テスト方法
シャーシダイナモを動かすときは,2人いたほうが安全です.
加速やブレーキの際には,車体の移動に注意しましょう.
上手くフライホイールの慣性モーメントが設定されていれば,実際に走行した時と同じ加速をすると思います.
実際の走行パターンと同じように,加速を開始と終了する速度を設定し,それに沿って実験すれば,大会時と同じような燃費が出ます.