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エコラン用ECUの自作 No.1 概要
エコラン用ECUの自作 No.3 インジェクタ駆動回路編
エコラン用ECUの自作 NO.4 プログラム編
【Arduino】スピードメータ,タコメーターの製作
前回は自作ECUの簡単な説明をしました.
今回は,インジェクタについての説明をしたいと思います.
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インジェクタとは?
インジェクタとは,燃料噴射装置のことで,キャブレターの代わりになるものです.
燃料をポンプで加圧し,電磁力を使用して弁を開閉することで燃料を吐出することができます.
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どうやって噴射量を変えるのか
インジェクタを使用して噴射量を調整するには,インジェクタに通電する時間を変えることで,燃料噴射量を調整することができます.
燃料を少なく噴射したいときは通電時間を短くし,多く噴射したいときは通電時間を長くするという,いたって簡単な仕組みです.
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無効噴射時間とは
しかし,ここで注意したいのは,インジェクターには「無効噴射時間」というものがあります.
インジェクタに通電を開始してから0.数msの間,噴射弁が動かないために,燃料が噴射されない期間があります.
この期間のことを無効噴射時間と呼びます.
たとえば,無効噴射時間1[ms]のインジェクタで,2[ms]通電した時には,実際には1[ms]分しか噴射されていないということです.
スーパーカブの純正インジェクタで実験したところ,0.28[ms]程度でした.
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燃圧と噴射量の関係
つぎに,インジェクターの噴射量と燃料圧力(燃圧)の関係です.
ベルヌーイの定理より,噴射量は燃圧の1/2乗に比例しており,式で表すと,
V2 = V1 * √(P2 / P1) |
ここで,V2 : 変更後の噴射量, V1 : 変更前の噴射量, P2 : 変更前の燃圧, P1 : 変更後の燃圧とします.
この式から,燃圧と噴射量の計算をすることができます.
例として,圧力を二倍にしても,噴射量は1.4倍にしかならないことに注意してください.
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噴射量の推定
インジェクタからの噴射量を推定する方法として,噴射時間から計算する方法があります.
事前に,噴射時間と噴射量の関係を測定する実験を行うことで,噴射時間から噴射量を求める式を導出することができます.
この式をマイコンに計算させることによって,リアルタイムに噴射量を求めることができ,燃費も求めることが可能になります.
ちなみに,カブ純正のインジェクタ場合(エコラン用のレギュレータを使用して燃圧を0.3MPaにした場合)(市販車とは条件が違います)
M = 0.000482225t – 0.000133608
の式で噴射量を求めることができました.(tは通電時間で単位は[ms], Mは質量[g])
(誤差や個体差がかなりあるので,あくまで参考程度に)
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インジェクタ駆動のプログラム
以上のことが分かれば,インジェクターのプログラムは簡単に作れます.
インジェクタ駆動のプログラムといっても,LEDを点滅させる回路とほとんど変わりません.
- スイッチを押したら,設定時間LEDを点灯させてから消灯させる.
- クランクセンサが反応したら,設定時間インジェクタに通電してから停止する.
この2つは入力と出力が変わっただけです.
このように,意外と簡単なプログラムで作ることができます.
つぎは,インジェクタの駆動回路について説明したいと思います.
エコラン用ECUの自作 No.3 インジェクタ駆動回路編
無効噴射時間の測定方法も教えてください♩
どのように測定しているのでしょうか??
よろしくお願いします。
コメントありがとうございます.
無効噴射時間の測定では,測定専用のプログラムを作成しました.
具体的に説明すると,指定回数,指定時間ずつ噴射するプログラムです.
実験に使ったのは,高精度のはかり,ペットボトル,インジェクタ,ArduinoのECUです.
自分の場合は,3msの噴射を500回し,ダイヤフラムの操作を行なった後(エコランの場合は,燃圧が下がってしまうため),再度500回噴射をするという繰り返しで計8000回噴射しました.
そして,ペットボトルに溜まったガソリンの量をはかりで計測しました.(ペットボトルは,密封しないと蒸発していきます)
その後,5ms, 7msと噴射時間を数回変えて計測しました.また,一応,圧力も変更して3,5,7msで測定しました.
噴射時間は,エンジンで実際に使う噴射時間に合わせて決定し,噴射回数は,エコランの大会での一回の加速での噴射回数に合わせて決定しました.
すべての計測が終わるとデータが揃うので,それを使用して,Excelなどで近似式などを作れば無効噴射時間なども算出できます.