【図解】倒立フォークのオーバーホールの方法(VTR1000SP)

VTR1000SPに乗って,ハードブレーキングをしていたら,倒立フォークからオイル漏れが,,,

ということで,オーバーホールをしました.所要時間は6時間ぐらい?
お店に頼むと数万しますが,今回は部品代だけです.

一番下に,パーツリストの写真を置いてあります.



必要なもの

  • スパナ
  • 6角ソケット
  • 6角レンチ(ラチェットで使えるもので,長い6角が必要かも)
  • フォークオイル(オイルの粘度の番数を調べる必要あり)
  • 交換部品(ダストシール,パッキン etc…)
  • フロントスタンド(フロントフォークの下端を持ち上げるタイプは不可)
  • 特殊工具(VTRの場合は,20*20[mm]角パイプで代用可能)
  • フォークスプリングコンプレッサー(ホームセンターの材料で自作,詳細は下記)
  • フォークシールドライバー(今回は,塩ビパイプで代用)

大型バイクはとても大きいサイズのトップキャップを使っています.スパナで開けるならいいですが,ソケットを使う場合は,ディープソケットを買わないと,アジャスト機構に引っかかり緩められません.


分解手順

フロントフォークを外す部分は省きたいと思います.

フォークをステムから外す前に,上側のステムだけ緩めた状態で,トップキャップを軽く緩めてください.(上側を締めていると,トップキャップを緩めにくくなります)

フォークを外した状態で,トップキャップを緩めるのはかなり大変だからです.



まず,青色のフロントフォークのトップキャップ(青色)を外します.
その次に,スプリング調整の部分(一番上の銀色)を外します.


フォークキャップを持ち上げると,白いプラスチックのカラー(筒)が出てきました.

この内側には,ダンパーとキャップをつなげるナットが隠れています.

また,このカラー(筒)には,穴が2つついており,そこを押し下げることで,ダンパーが取り外せるようになります.

このカラーはキャップとスプリングに挟まれているので,人間の手で押し下げるのは,まぁ無理です.

そこで,自作したフォークスプリングコンプレッサーを使いました.


材料は,L字アングル,長い全ネジ,ボルトです.

四角い部分に,2つの長めのボルトを付けてあるので,それをカラーの穴に引っ掛けることができます.その状態で,全ネジのナットを締めていくことで,スプリングが押し縮められるという仕組みです.

(クリックで拡大)



そして,自作したコンプレッサーを使用して,スプリングを押し下げていきます.

数センチ下げていくと,ナットが見えると思います.

そこを2つのスパナで緩めて,外します.

 

キャップが外れたら,ゆっくりとコンプレッサーを緩めていきます.


つぎに,カラーと内部のスプリングなどを取り出して,オイルを捨てます.

内部のダンパーロットを上下させて,オイルをすべて出しましょう.


次に,このダンパーロッドを外します.

まず,ダンパー側のナットは,このような形状になっています.

通常なら,ダンパーロッドを外すための高価な特殊工具が必要ですが,(少なくともVTR1000SPの場合は)いりません.

20*20[mm]のアルミ角パイプを買ってくるだけで,なんとそのまま使えます.


角パイプを差し込んで,このパイプなどをスパナや万力などで固定します.

その状態で,フォーク下端のキャップを取り外します.場合によってはめちゃくちゃ硬い場合もあるので,いい工具を使いましょう.(舐めたら数倍お金がかかります.)


次に,ダストシールやメタルなどを外します.

ダストシールはそのままマイナスドライバーなどで外せますが(傷つけないように),その下には,ストッパリングがあります.
これを,マイナスドライバーや棒などで外しましょう.

これを外さないと,次の工程でフォークのアウターは取れません.

 


ストッパリングを外したら,フォークのアウターとインナーを,勢いをつけて逆方向にバンバン引っ張ります.

すると,少しづつオイルシールがずれてきて,インナーとアウターが外れるはずです.

外れたインナーは傷がつかないように置きましょう.


部品が全部分解できたと思うので,パーツクリーナーを使ってひたすら綺麗にします.

パーツクリーナーで冷えて水分がつくと,錆の原因になるので,しっかりと拭きましょう.


組み立て手順

まず,インナーに順番通りにオイルシールやストッパリングなどを入れていきます.また,向きもあります.

パーツクリーナーで油分がなくなっているので,オイルを部品に塗ってからやりましょう.

その際に,インナーに溝があり,そこでオイルシールなどが傷ついてしまい,オイル漏れの原因となるので,シールやラップなどで保護してから通すようにしてください.


次に,インナーをアウターに入れます.

その際,メタルやオイルシールを圧入しないといけないのですが,これが結構大変な作業です.

まず最初に,メタルとその次のワッシャーまで入れます(上の写真の,上二つの部品,銅色と薄いワッシャ).
そして,これをマイナスドライバーなどで押し込みます.これは,簡単に入ると思います.

そして次に,オイルシールを入れるのですが,自分は,このような塩ビパイプを半分にしたものを使いました.これをハンマーで左右均等にハンマーで叩くことで圧入しました.

その際,布を巻いて,インナーに傷がつかないようにしましょう.

正しく圧入されると,叩いた時の音が高い音に変わります.

この工程は重要で難しいので,フォークシールドライバーがあったほうがいいと思います(高いですが).

そして,ストッパリングを正しく溝に取り付け,ダストシールを手などで押し込みます.


つぎに,ダンパーロッドを固定します.

取り外した時と同じように,20mmの角パイプを使って,フォーク下端のキャップを固定します.


次に,フォークを垂直に立て,アウターを一番下まで押し込みます.

そして,フォークオイルを入れていきます.オイル量は,VTR1000SPの場合は513[cm^3] または,油面高さが上面から135[mm]です.

オイルを入れたら,フォークを300[mm]以上伸ばさないように注意しながら,2,3回ゆっくりとストロークさせます.

つぎに,アウターとダンパーロットを同時に8-10回ゆっくりストロークさせます.

そして,ダンパーロッドとアウターを一番下まで押し込んだ状態で5分待ちます.この際にオイル内などの気泡が排出されます.

5分経つと,オイルの油面高さが変わっているはずです.

VTR1000SPの場合は上面から135[mm]なので,それにあわせて調整してください.(下の写真は間違っています)


今度は,スプリングを入れます.スプリングの巻の密度が高いほうが上だったり下だったりするので,そこは調べてください.

VTR1000SPの場合は,テーパーがかかっている面が上でした.


次に,カラーなどをいれ,コンプレッサーで押し縮め,フォークキャップを固定します.


次に,フォークキャップにスプリングのプリロードアジャスターをつけます.この時の高さは18[mm]になるように調整します.


次に,リバウンドのダンパーの調整です.

まず,ネジを止まるまで時計回りに回します.
次に,反時計周りに7クリック分回して完了です.


これで,フォークのオーバーホールは終わりです.

あとは,フォーク突き出し量を決めて,ステムの下側,上側の順番で締めてフォークを固定するだけです.

ハンドルバーを入れるのを忘れがちなので,注意しましょう.


これで全て完了です.

(参考)

3件のコメント

  1. こういった技術も素晴らしいのですね。何でもできて尊敬します。

    自分はアルマイト塗装の施されている部分に工具を使う時、いつも剥げてしまうのではとビビりながら作業をしています(笑)。

    1. 自分でやるのは楽しいですし,しかも知識も得られて安上がりという利点ばっかりなので,できることは全て自分でやるようにしています.

      アルマイトは剥がれやすくて気を使いますよね.
      ちなみに,この記事の青色アルマイトの部品がとても固く締まっており,スパナを使ったこともあって,アルマイト剥がれちゃいました.

      あまり気にしないタイプなので大丈夫ですが.笑

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